映画「おくりびと」で、一躍、脚光を浴びた納棺という儀式がありました。近しい人が亡くなった場合、私たちはさまざまな儀式をすることで、その死を現実のものとして受け止めていきます。
通夜、葬儀、告別式と続くさまざまな儀式のなかで、納棺は、死の直後に行われる遺体を棺におさめるための最初の儀式となります。納棺師は、故人の旅立ちの衣装を整えて棺に納めます。遺族や近親者は、これを手伝うことで、近しい人の死を少しずつ理解していくのです。
体内の血液を抜いて防腐処置を施すことで、ドライアイスなどがなくても長期間保全できるようする処置をエンバーミングと言います。また私が利用したのは、美粧というサービスです。これは、血を抜かずに遺体を保全することができます。
私の父のようにガンで亡くなった方は、たいてい最期には痩細ってしまい、元気だった頃の面影がなくなってしまうのですが、美粧をほどこしてもらったら、目元などが往時を彷彿とさせるように蘇ったので驚きました。父のようなガン患者だけでなく、不慮の事故で亡くなった方にも、この手法は有効だそうです。
もう亡くなった人の体は動きませんが、それでも、少しでも、生きていたときの面影を感じることができれば、それだけで遺族としてはうれしいものです。防腐処置が充分ではなく、亡くなってすぐ火葬にしていた昔は、故人との別れを充分に惜しむ時間がなかったのではないでしょうか?
遺族として、それはつらいことだと思います。